岡山市中心部にある複合商業施設「杜の街グレース」は、“岡山が世界に誇れる街”を目指し、100年後を見据えた街づくりが行っている。その中の商業・ヘルスケア施設棟「杜の街プラザ」に誕生した「WONSETO FOODHALL(ワンセト フードホール)」の空間デザインを担当。瀬戸内の魅力を世界に発信し、岡山らしさを引き出す空間づくりが求められた。

　瀬戸内は、多くの島々が織りなす美しい風景や温暖な気候、豊かな自然に恵まれている。それらの自然から着想を得て、心地良くおおらかな食空間を目指した。奥に長い建築特性を活かし、約70mの吹き抜けを設け、伸びやかな空間を表現。天井には、瀬戸内の雄大な凪、波、風、気流などの波動を想起させる波型ルーバーを計画した。おおらかな波の動きやゆったりとした時間の経過を視覚的に伝えるシンボルとなり、施設全体をつなぐと共に客席全体を寛容に包み込む。

また、中央には1階と2階を地形のようにつなぎ、新たなコミュニティーを生み出す「丘」を計画した。各々が好きな場を見つけて自由に利用できるくつろぎの場となったり、イベント時にステージや客席となるなど、さまざまな情報発信が可能な集いの場となっている。人々の能動性や今後の可能性を引き出す場として設けた。更にイスやソファには、この地の魅力を肌で体感できるよう、岡山の産業を代表するデニムを使用し、表地や裏地を使用することで変化をつけている。

　このフードホールから岡山や瀬戸内の魅力を発信し、食を通じて岡山の未来や希望を育む空間として、長く愛されることを願ってやまない。